山形地方裁判所酒田支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人を免訴する。
理由
本件公訴事実の要旨は、被告人は昭和二十六年四月二十一日酒田市本町五丁目酒田郵便局東側通用門附近に於て白旗正治外六名の者に対し『地方選挙で決する民族の独立と平和か、戦争と破滅か、地方選挙一問一答と題して『あなたの一票を「全面講和を要求し再軍備に反対する」代表に入れませう。それがたつた一つの生きる道です』『旅芸人村山、売国県政を衝く海野氏。三月二十九日市内明善寺にて開かれた海野三朗氏の講演会で同氏は「二十七日豊田村で村山知事の講演会と一緒になつた。村山は“アメリカには角のない牛がいる”とか“石鹸は一度使つて捨ててしまう程産物の豊富な国である”とか長々としやべつたが一体これで県民の腹がふくれるか、しかも県民の税金で県内八十ケ所も高級車で飛び廻つているタワケ者だ。山形の国鉄管理部の移管の問題にしても村山は反対促進委員長をなしていながら陰で秋田にくれてやつたし、板谷電化に何の努力せず、これを福島にとられている。県綜合開発にしても平貞蔵とかいう評論家に金を出して産業の発展よりも観光宣伝をやつている。重要な資源である北郡の亜炭山に一本のボーリングでもうちこんだことがあるか。これは県民から供米をしぼりとつて何も与えない本質である旅から旅えの旅芸人村山は、こうして山形県を食いものにして恥じない男である。私は大きな憤怒をもつて旅芸人村山県政を打倒したい」と語つた』等の同年四月三十日施行の山形県知事選挙に立候補した村山道雄を攻撃するとともにこれによりこの対立候補者たる海野三朗(日本社会党公認)を推薦支持する趣旨の記事を掲載するとともに『内外の反動勢力は、日本を植民地にして新しい戦争の根拠地にしようとしています。ダレス国務省顧問が日本に来ていらい、この計画は一そう露骨になつて来ました』『戦争屋は朝鮮にしがみついて中国ソ同盟に対し軍国日本が行つた道を進まうとしたが朝鮮、中国の人民の絶大な反撃にあいこの冒険は今や英国やアラブ十二ケ国をも動揺させ深く弧立しています』等の記事を掲載したビラ八枚を配付し以て法定外の選挙運動の為にする文書を頒布するとともに連合国である米国に対する破壊的批評の論議を為して占領目的に有害な行為をしたものであるというのであつて、右は公職選挙法第二百四十三条第三号第百四十二条、昭和二十五年政令第三百二十五号第二条第一条、一九四五年九月十日附、言論及新聞の自由に関する連合国最高司令官覚書に該当するところ、公職選挙法違反の点については昭和二十七年政令第百十七号大赦令によつて大赦があり、昭和二十五年政令第三百二十五号違反の点については該政令は平和条約発効とともに失効し犯罪後の法令により刑が廃止された場合にあたるから、刑事訴訟法第三百三十七条第二号第三号によつて主文の通り判決する。(昭和二九年三月三〇日山形地方裁判所酒田支部)